土地や建物を売却する時、何から始めればよいのか?
住み替えや相続などの関係で、現在所有している土地や建物を売却するシチュエーションは多くの人が経験することです。
でも分からないことだらけですよね…。
クルマの買い替えで下取りしてもらうことは何度か経験していても、土地や建物となると全く別世界です。
査定→媒介契約→売買契約→引き渡し
ざっくりレベルで作業プロセスをみても、不動産取引は見慣れない言葉が沢山出てきます。
業者さんに任せきりにならないように予備知識をつけようにも何から攻略していけばよいのか?さっぱり分からない人も大勢いることでしょう。
今回は土地や建物の売却をする時に、売主として知っておくべき考え方を採り上げます。
具体的には、業者さんは売主の味方ではないという点に触れてみたいとおもいます。
Contents
不動産査定 中古物件の価格は取引事例の比較でほとんど決まります
中古物件の売り出し価格は、売主側の希望価格と業者さんが査定した価格をもとに最終的な数字が決まります。
その業者さんの査定には、いくつかの手法が存在します。
収益還元法
原価法
取引事例比較法
この中で、圧倒的に用いられているのは取引事例比較法です。
中古物件の価格は、エリア、立地環境や築年数などで類似する物件の取引事例から算出することが圧倒的に多いです。
もう少し噛み砕いた表現にすると、下記のイメージです。
「すぐ近所のあの物件が3000万円で売れた。こっちはもっと広くて駅からも近いから3200万円だな。」
不動産査定 売り手側の味方をする宅建業者は少数派
売主としては少しでも高く売りたい場合が殆どですから、媒介契約を結ぶ業者さんから提案される査定価格が申し分ないもので、ちゃんとその価格で売買契約から引き渡しまで漕ぎ着ければ御の字ですね。
ですが、現実には色々と難しいこともあります。
意外かもしれませんが、買主側の不動産業者さんは言うまでもなく、売り手側の不動産業者さんも売り出し価格を決める際に「少しでも高く売ろう」とは考えていないケースが圧倒的です。
では業者さんの本音は?というと、
「出来れば自社で早く買い手を探し出し、売主と買主の両方から手数料をもらいたい。そのためには出来るだけお値打ち感がアピール可能な価格にしたい」
が圧倒的です。
そうなのです。
実は、「売り手側の不動産業者さん」と「売主」は、利害関係が一致していないのです。
不動産査定 宅建業者が売主の味方にならない理由
ではなぜ売主側の業者さんまでもが、売主の味方をしない状況が発生するのでしょうか?
利害関係を整理しながらみていきたいとおもいます。
宅建業者の手数料は最大で3%+6万円
業者さんが物件を仲介した際の手数料は、400万円超の物件を仲介するなら、最大で3%+6万円(消費税別途)です。
便宜上消費税を省いて試算すると、3000万円の物件なら3000万円×0.03+6万円=96万円(最大)です。
不動産の両手取引は合法
不動産を仲介する際、売主と買主の間に入る不動産業者さんのパターンは片手と両手が存在し、ともに合法です。
片手は売主と買主それぞれに業者さんがついて取引しますが、両手は単独の業者さんが売主と買主の間を取り持つ形です。
片手と両手なら、両手が圧倒的に儲かります。
【例】3000万円の物件を仲介した場合、便宜上消費税を省いて試算すると、3000万円×0.03+6万円=96万円(最大)です。

片手の場合、売主側の業者さんは売主から96万円(最大)、買主側の業者さんも買主から96万円(最大)の報酬がもらえます。

両手の場合、単独の業者さんが売主から96万円(最大)、買主から96万円(最大)の報酬がもらえますから、合計で192万円(最大)が懐に入ります。
儲けが2倍になるんですから、誰だって両手取引の成立を目指して頑張っちゃいますよね(笑)。
両手取引なら多少安くしても美味しい
両手取引は他の業者さんを排除して、自分だけで売主と買主の間を取り持たなくてはなりません。
他の業者さんを排除して両手取引に持ち込むのは、時間との勝負でもあります。
ですから業者さんは、なるべくお値打ちな価格の方が買主が見つかりやすいという考え方を優先させがちです。
下記に試算結果をまとめますが、片手取引になるくらいなら、多少安くても両手取引に持ち込んだ方が儲かるんですね。
片手で4000万円の取引をするよりも、両手で3000万円の取引をした方が儲かるんですよ。

売主の希望を優先させて物件を3200万円で仲介したが片手取引しか出来なかった場合、3200万円×0.03+6万円=102万円(最大・税別)しか懐に入りません。
もっと頑張って、物件を4000万円で仲介しても、片手取引しか出来なかったら、4000万円×0.03+6万円=126万円(最大・税別)しか懐に入りません。

物件を3000万円で売り出して両手取引が成功すれば、3000万円×0.03+6万円=96万円×2=192万円(最大・税別)が懐に入ります。
こうなると、あまり高い価格設定にしてもメリットありませんね。
だから、売主の味方になりにくいのです。
既にローンを完済しているなら多少安くても大丈夫かもしれませんが、まだローンが残っているのに諸事情で家を手放す状況で不当に安く売られてしまったら大変ですね。
4000万円で売れる家が、業者さんの都合で3000万円で売られたら最悪でしょう。
対策:売主自身が相場を把握しておくべし(簡単に作業できます)
せっかくの土地や建物を業者さんの都合で安く売られてしまうことを防ぐには、売主が値付けを業者さん任せにしないことが必要です。
そして任せきりにしないために必要なのは、類似物件の相場を把握しておくことです。
(路線価や公示地価を用いたりもしますが)中古物件の価格はエリア、立地環境や築年数などで類似する物件の取引事例から算出することが圧倒的です。
ポスティングされるチラシを集めておくのも手ですが、それでは手間がかかることも確かです。
私がおススメするのは、国土交通省の「土地総合情報システム」です。
「土地総合情報システム」のトップページで「不動産取引価格情報検索」をクリックして知りたいエリアや期間などの条件を設定していけば、過去の実績が一目瞭然です。
これなら仕事の合間に短時間で相場を把握出来てしまいます。
補足:査定額だけ高いパターンも気を付けよう(おとりに注意)
ここまでで、基本的な利害関係の違いから、業者さんは少しでも高く売ろうとすることが必ずしもメリットにはならないことをみてきましたが、敢えて査定金額を高く出してくる業者さんもいます。
3~5社くらいに見積依頼を出していて、高い金額で査定してもらえたら嬉しいですね。
ですが、この場合も気を付けた方がいいです。
実際に売れなければ意味が無いからです。
媒介契約を専属専任で結ぶための「おとり」として査定金額を高くしておいて、実際に高く売れなければどんどん値引きする羽目になるパターンですね。
実際にその金額で売れなければ意味が無いのですから、高い金額が出て来た場合、「何故高いのか?」に関する合理的な根拠をプレゼンテーションしてもらいましょう。
まとめ:業者さんとは上手く付き合おう
ここまでで述べたとおり、業者さんは売主のあなたとは利害関係が同じではありません。
そのため、あなたと心中するつもりで少しでも高く物件を売ろうと頑張ってくれるかどうかは全く分かりません。
そのため売主側としても相手に任せきりにするのではなく、業者さんの立ち位置を把握しながら上手に付き合う必要があります。